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「安全で安心な手術を提供するため患者さんに寄り添う特定看護師」

Kosei Interview

「安全で安心な手術を提供するため患者さんに寄り添う特定看護師」

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Kosei Interview 特定看護師が活躍する現場 #03海南病院 麻酔科領域

海南病院の手術センターでは、年間約5,000件の手術に対応しています。外科医師・麻酔科医師、看護師、臨床工学技士などがチームを組み、高度化複雑化する手術に対応するとともに、安全な手術となるよう注力しています。またICU(集中治療室)では、救急搬送された重症患者や高度な手術を終えた患者を受け入れて24時間体制で全身管理を行っています。

それぞれの現場で勤務する看護師は、手術や救急・集中治療などに関する高度な知識と技術が求められており、刻々と変化する患者さんの状態管理を行っています。

今回は、この手術センターの勤務経験を経て特定看護師となった鈴木さん・鬼頭さんとICUの勤務経験を経て特定看護師となった奥田さんにお話を伺いました。

取材対象者:海南病院 手術センター 鈴木慎治・鬼頭宗誠

ICU(集中治療室) 奥田しのぶ

取材日:令和4年7月25日

「外科術後病棟管理・術中麻酔管理(12区分22行為)」特定看護師

看護師を目指したきっかけを教えてください

祖父が事故で半身不随になった際に看護や介護の世界を知りました。この時の経験から人の役に立てる仕事につきたいと思い看護師を目指しました。

特定看護師を目指したきっかけを教えてください。

様々な経験を経てスキルアップを考える時期にちょうど「特定行為」がクローズアップされてきました。当院の手術室では麻酔科医師が全身麻酔などに携わっています。麻酔科医師は重症救急医療にも救急医とともに対応するため多忙を極めます。海南病院の麻酔科医師は現在7名おりますが手術や救急対応が重なることもあり、一時的に麻酔科医師が不足することもあります。この状況を何とか解決したいと思っていたところに麻酔領域の「特定行為」を知り、上司の勧めも後押しとなり研修を受講することにしました。

特定看護師としてどのような業務をおこなっていますか?

海南病院の特定看護師の先駆者として「特定行為」に関するシステムの構築や運用面を整備しました。日々の業務では、手術前・手術後の訪問で患者さんの状態把握、手術当日は点滴ルートの確保・麻酔薬剤・麻酔器の調整管理を行っています。また、外科系医師からの依頼があれば病棟へ出向き、中心静脈カテーテル※2やドレーン※3を抜いたり、末梢留置型中心静脈カテーテルは挿入も行っています。

※2「末梢留置型中心静脈カテーテル」…点滴確保が難しい患者さんに対して、エコーを使用して、腕の静脈から上大静脈まで、点滴用カテーテルを挿入します。それにより、安定した輸液・薬剤の投与ができるようなります。

※3「ドレーン」…外科の手術では、体内に血液・膿・浸出液などが体内に溜まらないようにドレーン(チューブ)を使って体外へ排出します。手術中にドレーンを挿入し、術後は状態が良くなるまでドレーンが入ったまま過ごします。

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手術前から患者さんの状態を把握されているなかで患者さんからはどのような反応がありますか?

手術前から病室へ訪問することは、患者さんの状態を把握する以外に、手術を受ける患者さんの不安の軽減や緊張を和らげる重要な要素もあります。手術室で当日に患者さんと対面すると「ちゃんといてくれるね」や「不安をわかってくれて嬉しい」など手術前からの患者さんへの関わりが不安の軽減に繋がっていると感じています。

活動の中で難しいと感じた部分や苦労したエピソードはありますか?

患者さんの状態や手術の進行に合わせて麻酔薬や麻酔器の調整を行うのですが、経験や知識の更なる習得が必要だと感じました。高度な技術が伴う医療行為は感染症などのリスクも高まり感染予防に配慮して管理する必要があります。そのため、清潔に点滴・処置を行えるように自分の技術として身に着けることに苦労しました。できる特定行為が増えれば増えるほど、覚える技術や知識が増えます。それに伴い練習が必要な技術が増えるため、できる行為数が多いことが逆にプレッシャーとなり苦労しました。

活動の中でやりがいを感じた瞬間を教えてください。

やはり手術後に病室を訪問した際、患者さんからお礼を言われた瞬間は嬉しく思います。また、自分が確保した点滴カテーテルが感染することなく、患者さんに必要な期間留置されたことを知ると、技術を磨いてきて良かったとやりがいを感じます。

今後の目標を教えてください。

私は特定看護師に関わるシステム構築の当初から携わっています。安全な術中麻酔管理や手術の進行をすることはもちろんのこと、今後特定看護師が増えることを想定して構築したシステムの強化を行いたいです。マニュアルの見直しなどを通して、今後研修を受講した後輩たちのため安全面を強化していきたいです。

▲今後の展望を語る鈴木さん

「術中麻酔管理(6区分12行為)」特定看護師

看護師を目指したきっかけを教えてください

ボーイスカウトに入隊していた際、身体障がい者へのボランティアなどに参加していて医療や介護に興味がありました。高校時代に進路を検討する中、男性でも看護職ができる事を知りました。看護職をしている親族に相談をした時の後押しもあり看護師を志しました。

特定行為看護師を目指したきっかけを教えてください

手術センターで勤務した経験がきっかけです。手術中や手術後の全身管理は非常に難しく状態が悪くなる患者さんもお見えになります。そのような状況をいち早く回避し患者さんがより快適に手術が受けられるようにしたいと常々感じていました。そんな中「特定看護師」が患者にタイムリーな医療を提供できることを知り自分がやりたい事と一致しました。また、海南病院の手術センターへ少しでも自分が役立てる存在でありたいという思いがあったこともあり目指しました。

▲麻酔管理を行う鬼頭さん

術中麻酔管理領域の特定行為では具体的に何を実施していますか?

術中管理領域麻酔に関するすべての特定行為を行っています。手術看護師としての経験も積んできているので、手術中は麻酔管理をしつつ、手術室全体が見渡せる患者さんの頭側の位置で手術看護師のサポートを行っています。手術看護師の教育や診療科の医師との連携に力を注いでいます。また、鈴木とともに曜日を分担して、手術前・手術後の病室訪問も行っています。

手術室のスタッフと連携をとられているとありましたが、スタッフのみなさんからどのような感想をいただきますか?

手術では患者の状態や手術の進行が刻々と変わります。手術室の看護師は、手術の術式に合わせて手術がスムーズに進行するよう執刀医の介助を行います。私は特定看護師として手術前の準備から手術中のタイミングに合わせた声掛けなどを行っています。スタッフからは事前準備がしっかりと行えたため機材の不足なく手術が行えた、手術の進行がスムーズだったといった感想をいただきます。

カルテからの情報収集
麻酔器などの動作確認

▲手術前は、カルテからの情報収集や麻酔器などの動作確認を行います

難しい部分・苦労した部分はありますか?

手術では呼吸器や何種類もの薬剤を扱いますが、患者さんの変化の原因を多角的にとらえることに苦労しました。患者さんにどの薬がどのような影響をもたらすのか、どのような相互作用をもたらすのかといったことを多角的にとらえていくには経験が必要です。今も苦労している部分なので日々勉強と振り返りを行い1件でも多くの経験を積み、より安全な特定行為を実施していきたいと思っています。

マスク換気

▶麻酔導入後、患者さんの呼吸が停止してから麻酔器を調整してマスク換気を行います。

やりがいを感じた瞬間はどのような時か教えてください

手術中に動脈ラインの確保※2や薬剤の投与を行い麻酔管理しますが、手術後に病室を訪問した際に患者さんが平穏に過ごされている様子を見ることができた時です。患者さんの様子を見るとほっとします。そのためには刻一刻と変化する患者の状態を注意深く観察し、適切なタイミングで介入することが必要と思います。またとても単純ですが、麻酔科の先生方や診療科の先生方にありがとうと言っていただけることが自分のやりがいを支えてくれるものであり、協同できる機会にとても感謝しています。

※2「動脈ラインの確保」…血圧変動をリアルタイムで知る必要のある手術などでは血圧の観察などのために動脈内にカテーテルを入れます。

▲鎮静薬の投与量の調整

今後の目標を教えてください

自分の成長が一番の課題ではありますが、後輩の育成も行っていきたいと考えます。手術センター内でも数名のスタッフが、特定看護師に興味を持ってくれています。その手術センタースタッフにとってのロールモデルとなれるように精進していきたいです。

「術中麻酔管理領域」特定看護師

看護師を目指したきっかけを教えてください

幼少時に人道支援に関するテレビを見たのがきっかけで看護師に興味が湧きました。また、親族に看護師が多数いて、看護や医療の現場の話を聞くうちに医療の道へ進みたいと思うようになりました。

特定看護師を目指したきっかけを教えてください。

休職期間もありましたが約24年看護師をしています。これまで、重症患者さんに対応する現場が多く、患者さんの状態を客観的に捉え評価を行うアセスメント※1能力の向上に努めていました。

医療の現場では、看護師が患者さんの変化に気づき、医師へ報告をしても別の患者対応などで対応困難な場面があります。対応が遅くなると治療へのタイムラグが発生してしまうことがありジレンマを抱えていました。様々な経験のなかでアセスメントの根拠が弱いのではないかと感じることもあり、根拠をもってアセスメントを行い患者さんへ医療を提供したいと感じていました。

また、医師や他職種の視点・考えを知ったうえで「円滑で安全な医療を提供したい」と強く思うようになりました。

私は集中治療室(ICU)に勤務しており、手術を受ける患者さんの術前から術後までの期間で看護を提供しています。患者さん個々の状態をふまえた看護の提供や様々なリスク回避が行えるように全身管理を行っていきたい・学んでいきたいと思い特定行為研修を受ける決断をしました。

※1「アセスメント」…脈拍・血圧・呼吸などの数値、患者の行動、患者の症状や病態によるデータや結果など情報収集をした内容を判断しケアや処置、治療などの関わりに活かします。看護過程(情報収集、アセスメント、問題点の抽出、看護計画の立案・実施・評価)におけるプロセスのひとつです。

▲勤務先の集中治療室ICU

術中麻酔管理領域の特定行為では、具体的にどういったことをされていますか?

術中麻酔管理では、患者さんが手術室に入ってからの麻酔の管理を行います。また、手術前・手術後に患者さんを訪問したりしています。

手術中の麻酔管理では、動脈ラインの確保※2・気管挿管後の麻酔器の設定変更※3・呼吸器離脱のための評価※4などを行っています。

手術前・手術後の患者さん訪問では、主治医や麻酔科医師の訪問とは別に個別で行っています。

※2「動脈ラインの確保」…血圧変動をリアルタイムで知る必要のある手術などでは血圧の観察などのために動脈内にカテーテルを入れます。

※3「気管挿管後の麻酔器の設定変更」…全身麻酔では、全身麻酔薬を投与後に自力で呼吸ができなくなるため、気管挿管(口からのどを通して気管の中に管を通す)を行い人工呼吸器・麻酔器につなぎます。手術中は常に機器の設定を管理し状態に合わせて変更を行います。

※4「呼吸器離脱のための評価」…患者さんが人工呼吸器を外して完全に自発呼吸ができるかどうかを確認します。

手術前・手術後の訪問での患者さんの反応はいかがですか?

全身麻酔が怖いと感じられる方が多くいらっしゃいます。特に初めて手術受けられる方の不安は大きいと思います。私たちは、この不安を少しでも軽減できるように手術前と手術後にお部屋を訪問して確認や声をかけたりお話を聞いたりしています。

困難なことはありましたか?

ICUの勤務経験が長く手術室勤務を経験していないため、麻酔管理だけでなく手術室の看護業務を学ぶ必要がありました。現在、研修を修了して1か月が経過していますが手術看護を学び、特定行為の実践を進めています。今後は経験を積み、自己学習をくり返し更に知識や技術を深めたいと思います。

今後の目標を教えてください。

今は整形外科の手術を担当していますが経験・学習を重ね、一種類でも多くの術中麻酔管理ができるように努めたいです。また、医師から任せてもらえるように努力していきたいです。特定行為研修では様々なことを学習しました。そこで得た知識を勤務している部署の後進育成に役立てていきたいです。特に「鎮静・鎮痛」はICUでも必要な知識なので、伝達講習を通し看護の質向上に貢献していきたいです。

下記の記事では、特定看護師についてご紹介しています。ぜひご覧ください。

「特定看護師の特定行為によって現場はどうかわる?特定看護師の活躍の現場」

Kosei Interview 「特定看護師の育成と活躍フィールドを強化する海南病院の挑戦」特定看護師が活躍する現場 #01海南病院 特定行為研修

Kosei Interview「高度な知識と技術で、タイムリーに患者さんの苦痛を取り除く特定看護師」特定看護師の活躍する現場 #02海南病院 外科領域

海南病院

病 床 数/540床 

診 療 科/全31科

場   所/愛知県弥富市前ケ須町南本田396番地

電話番号/0567-65-2511(代表)

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