医療・健康・介護情報をわかりやすく発信

With Magazine

「高度な知識と技術で、タイムリーに患者さんの苦痛を取り除く特定看護師」

Kosei Interview

「高度な知識と技術で、タイムリーに患者さんの苦痛を取り除く特定看護師」

  • 医療現場
  • 特定看護師

Kosei Interview 特定看護師が活躍する現場 #02海南病院 外科領域

海南病院の5A病棟では、主に消化器外科と乳腺外科の患者さんが入院しています。外科病棟で働く看護師の業務は多岐に渡り、入院患者さんの状態把握や疾患・病態に合わせて異なるケア・対応やご家族への対応などマルチタスクに対応できる能力が求められます。

今回は、この外科病棟勤務を経て特定看護師となった伊藤さんと金子さんにお話を伺いました。

海南病院 5A病棟:伊藤祥子(いとうしょうこ)・金子沙織(かねこさおり)

取材日:令和4年7月25日

「外科術後疼痛管理領域」特定看護師

外科術後疼痛管理領域
海南病院 5A病棟 伊藤祥子(いとうしょうこ)

看護師を目指したきっかけを教えてください

将来の職業を考える時、両親から「看護師」を勧められました。当時やっていたドラマの影響もあったのと、手に職をつけたかったので看護師を目指しました。

特定看護師を目指したきっかけを教えてください。

看護師となり今年で10年目になります。病棟看護師として勤務し8年目の頃、海南病院が特定行為の指定研修施設取得に関する話を聞き資格取得について検討していました。ちょうど同時期に上司から外科病棟勤務を活かして資格取得を目指してみないかと声をかけられたこともあり他施設で資格取得を目指すことにしました。

PICC手技研修

▶2020年11月PICC(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル)手技研修に励む様子。

超音波装置で肘付近にある静脈を選定し、ここから長いカテーテルを体の中心部の上大静脈まで挿入していきます。

特定看護師となり具体的にどういったことをされていますか?

研修が修了してから約10か月が経過しました。私が勤務する病棟は消化器外科と乳腺外科の手術後の患者さんも多くいらっしゃいます。私は特定看護師として金子と同じように、手術後の中心静脈カテーテル1やドレーン2を抜去する業務を主に行っています。常に医師のカルテ記載を確認し「採血の結果をみて乳腺ドレーンを抜去する」、「食事がとれたら中心静脈カテーテルを抜去する」といった記載があれば、患者さんの状態をみて抜去の判断を行います。外科医師は外来や手術があるため常に多忙です。特に手術が長引くと病棟の患者さんを待たせる時間が長くなります。そのため、出勤時に医師に特定行為をしてもよいかどうか確認して、患者さんの処置を行っています。

※1「中心静脈カテーテル」…中心静脈とは心臓に最も近い太い静脈で、上大静脈・下大静脈のことを指します。手術内容によって異なりますが、安定した輸液・薬剤の投与ができるように手術中に中心静脈にカテーテル(管)を挿入します。術後は状態が良くなるまでカテーテルが入ったまま過ごします。患者さんの状態により穿刺部位が異なります。

※2「ドレーン」…外科の手術では、体内に血液・膿・浸出液などが体内に溜まらないようにドレーン(チューブ)を使って体外へ排出します。手術中にドレーンを挿入し、術後は状態が良くなるまでドレーンが入ったまま過ごします。

▲患者さんのドレーンを抜去する伊藤さん

特定行為により患者さんにタイムリーに処置ができるのですね。

病棟看護師として勤務していた頃に、医師が多忙で「来室時間になっても病室に来ない」と不安にされている患者さんを目にしてきました。特定行為を医師に代わって行うことにより、患者さんが感じている不安を少しでも取り除き入院生活を送っていただきたいです。

活動されている中で課題と感じる部分はありますか?

外部施設で特定行為研修を受講しましたが、院内の「特定行為」に関する周知や理解が必要だと感じています。自院で研修する際、自部署のスタッフには理解していただいていますが、他部署に協力を依頼する場面もあり「特定行為」について発信しながら研修を進めていました。今後特定行為を進めていくためには、病院全体での理解をさらに深めていくことが必要です。

やりがいを感じる部分を教えてください。

医師に事前に「先生が約束の時間にこられないときには私が管を抜いてもいいですか?」と確認をとり、患者さんにはしっかりと説明をして理解いただいたうえでドレーンや中心静脈カテーテルを抜いています。患者さんからは「早く抜けてよかった」と声をいただくと早く処置をほどこせてよかったと感じます。

今後の目標を教えてください。

現在は自分が勤務している病棟で特定行為を行うことが多いですが、他の病棟にも外科領域の患者さんが入院されています。そのため、他の病棟にも出向き患者さんのために「特定看護師」としてやれることを実践していきたいと感じています。そのためには院内全体の理解が必要ですので、さらに「特定看護師」の理解を広めていきたいです。

「外科系基本領域」特定看護師

外科系基本領域
海南病院 5A病棟 金子沙織(かねこさおり)

看護師を目指したきっかけを教えてください

手に職をつけようと思い資格取得が必要な職業を探していたときに「看護師」という職業を見つけました。ちょうどその時、身内が入院し看護師を身近に感じたこともあり看護師を目指そうと思いました。

特定看護師を目指したきっかけを教えてください。

看護師になり8年目となりました。入職後からずっと外科病棟に勤務しています。看護師6年目の時に特定看護師を目指し、7年目で院内の研修に参加しました。

目指したきっかけは、海南病院に入職し外科病棟に配属されてからラダー研修※3を受講したときです。自己評価で自分の強みについて考えることが何回かあり、私の強みが外科病棟での経験年数が長いことであると気づきました。この強みをさらに伸ばしたいと思っていた時に海南病院「特定行為研修」外科系基本領域(第一期)の研修に参加しないかと上司から声もかかり、特定看護師を目指しました。

※3「ラダー研修」…キャリア(経験年数や能力)に応じた看護師の教育システム

2021年7月1日に行われた「特定行為研修」第一期生開講式

外科系基本領域の特定行為では、具体的にどういったことをされていますか?

私が勤務する5A病棟は外科/乳腺・内分泌外科の患者さんを受け入れています。特定看護師として、消化器外科領域の「中心静脈カテーテル※1の抜去」と乳腺外科領域の「ドレーン※2の抜去」を行っています。今までは病棟看護師として挿入部位に出血がないかなどカテーテルやドレーンの管理や観察を行っていましたが、「特定看護師」になってからは術後の患者さんの状態に合わせて中心静脈カテーテルやドレーンの抜去等が行えるようになりました。

今、伺った特定行為は外科医師と回診時に行うのですか?

医師から状態がよければ、カテーテルやドレーンを抜いてもいいよと事前に指示があります。具体的には、医師が事前に作成した「手順書」に記載のある症状の範囲内であった場合に、特定看護師の判断で「抜去」が行えます。現在は、抜去をする前に医師に電話で確認した後に実施しています。

特定看護師になる前の現場の流れを教えてください。

現在、特定看護師として行っている「特定行為」は医療行為※4になります。今までは、病棟看護師として患者さんの状態を常に観察し医師へ報告をしていました。カテーテルやドレーンの抜去では、病棟看護師の報告から医師が患者さんを回診し状態を確認してから抜去を行います。病棟看護師として、処置の介助として同席することはありましたが、あまり機会はありませんでした。

※4「医療行為(医行為)」…病気やケガなどの治療や診断、予防を行う行為のこと。(医師法等に明記)医学的判断に基づく行為なので医師免許をもった医師のみが認められています。医療行為の一部は他の有資格者にも認められています。

「特定行為」は高度な知識と技術が求められますが、研修を受けるなかで難しかったこと・困難だったことはありましたか?

医療行為を行うために膨大な勉強量が必要でした。海南病院の研修プログラムは、研修に専念できるように研修日と業務日がしっかりと分かれています。業務との平行で勉強を進めるための時間管理に苦労しましたが、研修日があることはとても恵まれた環境だと思いました。しかし、その中でも膨大な勉強量の勉強時間を確保できるよう工夫しました。

また看護師になる勉強とは異なるため、一から学ぶことが多かったです。医療行為を行うという緊張感もあるので、人体の構造や働きを理解する解剖生理学などを学び直しました。

膨大な勉強量が必要なので時間管理の工夫をされていたのですね。

研修プログラムでは、月2回「出張」という形で勉強に専念する時間がありました。それでも勉強が追いつかない場合は、勤務している病棟の課長と相談して、勉強時間を確保していただくなど全面協力の体制で支えていただきました。

「特定行為」で行う医療行為の技術はどのように学ばれましたか?

外科医師師監修のもと約2か月実習を行いました。ただ技術を学ぶだけでなく、患者さんの状態を把握する理解力や思考力、特定行為を行うための判断力も併せて学びました。

▶壊死した組織の除去も行います。

特定看護師として活動するなかでやりがいを感じる部分はありますか?

患者さんは管1本でも体に入っているだけで苦痛を伴います。カテーテルやドレーンを抜いた処置をした時に、安堵された表情や言葉を聞くと迅速な処置ができてよかったと思います。また、高度な知識も増えたので、後輩指導の場面でもやりがいを感じます。後輩と一緒に患者さんの状態から今後の未来を見据えた治療方針を検討し、それが実現できたときは特定看護師として知識を身につけてよかったと感じる瞬間です。

特定看護師の活動について外科医師からの反応はどうですか?

特定看護師となって約1か月が経過しましたが医師にフォローしていただきながら特定看護師として活動しています。私より1年前に特定看護師となった先輩は、医師が多忙のためカテーテル抜去にすぐ対応できないときに部署をまたいで患者さんの元へ向かうなど院内で活動しています。

今後の目標を教えてください。

特定看護師となり約1か月しか経過していないため、技術の向上はもちろんのことですが、患者さんの苦痛や不安を取り除けるように医師との連携を深め、医師不在時でもタイムリーに医療行為が行えるように努めていきたいと思います。そして「特定看護師」として病棟の先導者になれるように意識していきたいと思います。

約1年に渡る特定行為研修では本当に学ぶことが多かったです。自分の能力を発揮するだけでなく、私が特定看護師として活躍することで病棟全体で看護の質を向上させることが目標です。

▲今後の展望を語る金子さん

下記の記事では、特定看護師についてご紹介しています。ぜひご覧ください。

「特定看護師の特定行為によって現場はどうかわる?特定看護師の活躍の現場」

Kosei Interview 「特定看護師の育成と活躍フィールドを強化する海南病院の挑戦」特定看護師が活躍する現場 #01海南病院 特定行為研修

Kosei Interview「安全で安心な手術を提供するため患者さんに寄り添う特定看護師」特定看護師の活躍する現場 #03海南病院

海南病院

病 床 数/540床 

診 療 科/全31科

場   所/愛知県弥富市前ケ須町南本田396番地

電話番号/0567-65-2511(代表)

受付時間/
紹介状をお持ちの方
●予約のある方 8:00~ ⇒紹介予約受付へ
●予約のない方 8:00~11:00 ⇒中央受付へ

紹介状をお持ちでない方
●予約のある方 8:00~17:00 ⇒再来受付機へ
●救急外来受診後、診察指示がある方
 8:30~11:00 ⇒中央受付へ

※当日予約のない方は、中央受付でご相談ください。

JA愛知厚生連 SNS

SNSで皆さんの生活に役立つ
医療・健康情報をお届けしています。

  • Instagram
  • facebook
  • LINE 公式アカウント