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中日新聞LINKED Another Story #14「コロナ禍でも看護教育をストップしない。」

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中日新聞LINKED Another Story #14「コロナ禍でも看護教育をストップしない。」

  • 新型コロナウイルス

中日新聞LINKED「新型コロナウイルスとの闘い JA愛知厚生連8病院 820日の軌跡」の取材を通じて、誌面ではお伝えしきれなかった職員の想いをもう一つの物語「Another Story」としてご紹介します。

第14回は「看護専門学校」の物語です。

本部 看護統括課長:山本 美奈子(以下 山本)
インタビュアー:Project  LINKED事務局(以下 LINKED)

取材日:令和4年1月21日

LINKED:コロナ禍における看護専門学校の運営という観点でお話を伺いたいと思っています。当初はどのような取り組みをされたのでしょうか?

山本:はじめに緊急事態宣言を受けて、看護専門学校(以後、学校)の休校を決定しました。教育界で初めての全国一斉休校ということもあり、県立学校の対応を参考にしました。次に授業をどのように代替していくかを検討しました。当時、全国の学校ではまだオンライン授業ができる環境になかったので、教員からも不安の声が上がっていました。本会の3校においても同じ状況でしたので、まずは課題を出してみようということになりました。同時にWEBツールを活用して一方通行ではありますが授業の動画配信を始めました。ただし、国や県からの指示としては「双方向で授業が成り立つ」ということだったので、それに対応したツールも導入しました。

LINKED:実習はいかがでしたか?

山本:臨地実習の代替には苦労しました。本会では、ほとんどの臨地実習を学校に隣接する病院で行っていましたので、病院の協力を得ながら調整し最低限の臨地実習を行うことができました。外部にお願いしている在宅、精神領域など特殊な領域では、患者さんに感染させてはいけないということでお断りが相次ぎ、臨地実習が困難な状況でした。県からの指針では、卒業年度の3年次に限り、臨地実習を学内演習に振り替えても良いことになったので、臨地実習が停止している期間は学内演習へ切り替え、代替え実習としました。現在も引き続き精神領域の臨地実習が難しくなっていますが、本会は稲沢厚生病院に精神科がありますので、外部の病院で断られた臨地実習の一部を稲沢厚生病院の協力を得て実習できるよう調整しています。このようなケースにも柔軟に対応できるのは、厚生連に8病院あることのメリットだと実感しました。

LINKED:それは厚生連ならではですね。学内演習への振り替えも先生方がすぐに対応されたのですか?

山本:看護教員は、ICTを活用した教材や授業案の作り替えは、時間も労力もかかります。しかし、看護教育を止めてはいけないとの一心で、看護教員が協力しながら臨地実習から校内演習へ切り替えていきました。その中でシミュレーション教育を多用しましたが、本会は教材教具が十分に整備されており、基礎看護技術演習については問題なく指導できたと思います。ただ、看護師は患者さんとコミュニケーションをとることが一番重要です。例えば、認知症の患者さんとのコミュニケーションを学ぶのに、看護教員が真似をしても限界があります。そこで隣接する病院から看護師を週に数回、派遣してもらい臨床現場の生の声で教えていただくということをしました。シミュレーション教育では、紙に書かれた患者さんにどのような看護を提供するか考えていくのですが、実際の患者の様子を現場の看護師から聞くことにより、看護学生も刺激を受けながら学びを深めることができました。

LINKED:学生さんの反応はいかがでしたか?

山本:看護学生たちがどのように考えていたのかは、把握しづらい状況でした。入学したばかりの1年生は、入学と同時に休校となり、友人と親交を深める間もなくオンライン授業になりました。2年生は臨地実習が後半に組み込めることもあり、そこまでの緊張感はなかったと思います。ただ、3年生は単位が取れなければ卒業できないということで切迫していました。それに加えて2年生の臨地実習で患者さんと触れ合っているので、臨地実習というのは「臨床現場で教えていただく」「患者さんから学ばせていただく」ということをよく理解しており、臨地実習に行きたいという思いは強かったと思います。

LINKED:現場で学ぶことの大切さを知っているが故の思いですね。

山本:当時の3年生は非常に前向きに取り組む看護学生が多く、臨地実習に行けるとなれば感染対策を徹底し、臨地実習に行けた時には水を得た魚のように喜んでいました。また、40日間ある夏休みを分割して取るという特徴的なことをしました。自分のグループはこの週に実習に行くけれど、別のグループは休んでいる。自分たちの実習が終わると、別のグループと交代して休みに入る。そういう変則的なスケジュールでも文句ひとつ言わず対応してくれました。これは現在に至っても継続しています。この第6波では、多くの病院が感染の危険度が高く実習停止という形を取っているため、春休みを前倒しして取っている学生もいます。

LINKED:臨機応変にやってくれているのですね。

山本:濃厚接触者が1人出るだけでも実習停止になる時があるので、いかに自分の健康管理が大事かということを、こういう場面から学びとっていると思います。将来医療従事者になることを自覚し、感染対策をしっかり実践してくれています。

LINKED:学校というか医療業界では、一般企業と比較するとICTの活用が遅れていましたが、それが一気に進みましたね。

山本:一気に進みました。看護教員もICTが苦手な世代の人が多いのですが、克服して使いこなすことができるようになっています。ただ、学校説明会やインターンシップ、学校祭などの行事が実開催できない状況が続いています。看護学生募集では、オンラインで交流会を開催したり、You Tubeを活用したり、学校のアピールの仕方も変わりつつあります。

LINKED:学生さんたちの学ぶ機会を停滞させてはいけないという思いで取り組んでこられたのでしょうか?

山本:学びの場を提供できないことだけは避けなければならないので、3学校で情報を共有しながら各学校でノウハウを蓄積し、2年目には独自のカラーでオンライン授業が運営できるようになりました。

LINKED:厚生連の学校としてのスタンダードを設けるというよりも、それぞれの学校で最も良いと思う方法をそれぞれに取っているという形なんですか?

山本:本来であれば統一した方がいいというご意見もあると思いますが、急な有事発生だったので、まずは看護学生の学びを止めないよう、特に1年目は各学校主導で取り組みました。ただ、情報共有の場は設けてきました。オンラインツールは外部講師の意向もあり現在も3学校揃えることはできていませんが、各学校でスムーズに運用できているという印象です。

LINKED:ベストな方法を取捨選択しながらやっていくという体制が軌道に乗っているという状態ですね。

山本:非常に柔軟に対応できるようになったと思います。

LINKED:学生の方が先生よりもICTへの対応は早いですか?

山本:今の看護学生にはなくてはならないものだと思います。簡単に操作できますので、あって当然という感じです。コロナの影響により臨地実習のあり方がすっかり変わってしまいましたが、現場に行く大切さは変わらないと思うので、病院の協力を得ながら1日でも多く臨地実習に行かせてあげたいです。

LINKED:看護専門学校と病院の情報共有はどのようにされているのですか?

山本:本部の看護統括課には、看護学生を含めた看護師たちの教育を検討する場があり、その中で看護学生の情報も共有しています。特にコロナ禍で臨地実習を受けた学生は、経験不足ということをマイナスに受け止めているので、入職した時に大きくジャンプアップしないように教育体制を整えてほしいと病院にお伝えしています。反対に看護学生にも配慮してもらうことが当たり前ではなく、勇気を持って飛び込むということを学校から指導するようにお願いしています。本会には学校と病院がありますが、私たちは地域の方たちを支える看護を提供するために、看護学生や看護師を育てています。それが本会の使命である「地域医療を守る」ことにつながると、学校にも病院にも伝え続けています。

LINKED:さいごに、コロナ禍を乗り越えてこられたポイントは何だと思われますか?

山本:やはり柔軟に対応してきたことだと思います。最初は本当に大変でしたが、学校と共に協力しながら、また、病院の協力を得ながら、オンライン授業やシミュレーション教育をバージョンアップできました。効果的な看護基礎教育のあり方を考え、その時のベターな方法を実践できたことが質の高い看護基礎教育につながったということは大きな収穫だったと思います。

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