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中日新聞LINKED Another Story #12「オール厚生連でワクチン接種、延べ18万回以上。」

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中日新聞LINKED Another Story #12「オール厚生連でワクチン接種、延べ18万回以上。」

  • 新型コロナウイルス

中日新聞LINKED「新型コロナウイルスとの闘い JA愛知厚生連8病院 820日の軌跡」の取材を通じて、誌面ではお伝えしきれなかった職員の想いをもう一つの物語「Another Story」としてご紹介します。

第12回は「ワクチン接種」の物語です。

企画管理部 経営企画課長:秀野 功典(以下 秀野)
インタビュアー:プロジェクトLINKED事務局(以下 LINKED)

取材日:令和4年1月21日

LINKED:JA愛知厚生連が取り組んでいるワクチン接種について教えてください。

秀野:基本的には、個別接種、職域接種、大規模集団接種会場を運営しています。集団接種は市町村が主催するものである、こちらには職員を派遣しています。個別接種、職域接種、大規模集団接種会場を合わせたこれまでの接種回数は、JA愛知厚生連全体で約20万回となっています。(令和4年3月現在)

LINKED:これだけの実績を振り返って、何か気づかれた点はありますか?

秀野:本会の病院を比較すると、個別接種の件数が突出して多い病院があります。一見良いことのように感じるかもしれませんが、地域の基幹病院がワクチン接種の大部分を担わないといけないということは、医療資源が不足しているか、基幹病院、医師会、行政との連携が不足していた可能性があります。

LINKED:地域の連携不足ということでしょうか?

秀野:コロナ禍での対応は、大規模自然災害の対応と共通する部分が多いと思います。巨大地震などの災害時には、基幹病院、医師会、行政が連携、役割分担して地域の医療を維持していく必要があり、基幹病院が二次、三次救急などの入院診療を担い、医師会や行政は避難所の対応や一次救急を担います。これをコロナ対応に当てはめてみると、基幹病院が入院診療を担い、ワクチン接種やホテル療養等の軽症患者の対応は医師会や行政の役割になると思います。コロナ対応において、基幹病院がワクチン接種まで担うということは、震災時には、避難所対応や一次救急まで担う必要があるということになります。大規模災害時に1人でも多くの命を救うには、医師会や行政を巻き込みながら連携、役割分担を推進していく必要があると思います。

LINKED:コロナが発生したからというわけではなく、平時の地域連携が重要ということですね。

秀野:ワクチン接種であれば1カ月、2カ月の準備期間を設けることができましたが、大規模災害では猶予はありません。有事の際に速やかに物事を決定していくためにも、平時の連携を強化する必要があると思います。

LINKED:職域接種では、どのような方を対象に運営されたのですか?

秀野:接種率向上のため、JAグループの職員とその家族を対象に、約3万回の接種を各地域で実施しました。

LINKED:大規模集団接種会場の運営について伺いますが、広報誌を見せていただくと、令和3年5月の段階で県からの要請があったということですが、どういう状況だったのでしょうか?

秀野:当時、本会病院でも個別接種や集団接種が始まっており、入院受け入れを実施し、発熱外来も立ち上げているなかで、病院にこれ以上負担をかけられないという思いもありましたが、県から公的医療機関として厚生連に役割を果たしてほしいと依頼され、承諾しました。当時の県の主な目的は、県民の接種率向上と市町村格差の是正の2つでした。個別・集団接種は市町村単位が基本となりますが、市町村をまたいで接種できる大規模集団接種会場なら市町村格差の是正に貢献できると思いました。県民にとっても良いことですし、ワクチン接種は、コロナによる通常診療の制限を防ぐ最善策だと思うので、大規模集団接種会場の運営は、「地域医療を守る」という本会の理念とも合致するという認識で準備を進めました。

LINKED:病院の負担が増す中で各病院に協力を仰いだと思いますが、各病院の反応はいかがでしたか?

秀野:当初、県からは毎日運営してほしいと言われましたが、厚生連の病院は、平日に個別・集団・職域接種を実施しているので、土日のみとしました。今回、8病院から職員を集めていましたが、病院からはこれ以上職員に負担をかけることはできないと言われることもありました。ただ、今回、オール厚生連で運営するということと県が厚生連に依頼してくれたということをくみ取って協力してほしいと伝えたところ、最終的には全病院の協力を得ることができました。結果的に、コロナの影響で研修会や勉強会の開催が少ないなかで、大規模集団接種会場が各病院の職員交流の場にもなりました。

LINKED:その他に準備を進める中で気づかれたことはありますか?

秀野:今回の対象市町村は安城市、西尾市、碧南市、高浜市、刈谷市、知立市の6市でしたが、各市からは、安城更生病院で大規模集団接種会場を運営してもらえるのはとてもありがたいと言っていただきました。住民のなかには副反応が不安なので、救命救急センターを備える病院での接種は安心だとの意見もあり、安城更生病院が地域から信頼されていることを再認識しました。また、ワクチン接種で安城更生病院に初めて来院したかたも見え、病院を知ってもらうという点でも非常に価値があったと思います。

LINKED:各市と協力しながら、運営体制を築いていかれたのですね。

秀野:今回の大規模集団接種会場の運営では、市の健康課の担当者と様々な調整を行いました。その結果、市の担当者と顔の見える関係を作ることができました。この関係は、平時の連携にも活用できると思います。

LINKED:ワクチンの廃棄ゼロ、残薬ゼロで運用したとお聞きしましたが、キャンセル対応はどのようにされたのでしょうか?

秀野:ワクチンの管理については、安城更生病院の薬剤師がしっかりやってくれました。大規模集団接種会場で使用していたモデルナは1バイアルから10回分接種(1.2回目接種の場合)できるのですが、当日、残薬が出ないように、予約数を10の倍数でコントロールしました。キャンセルが出た場合は、事前に用意したキャンセルリストから夕方に連絡を入れ、急遽来院してもらう調整をしました。愛知県からはバイアル単位の廃棄はもちろん、シリンジ単位(1人分)の廃棄も当初は禁止されていたので、夕方の調整には本当に苦労しました。

LINKED:キャンセルする方は、どういう理由でキャンセルされるのですか?

秀野:他の会場で二重で予約していたり、体調不良などで、1日10人ぐらいはキャンセル者がいました。

LINKED:でもそれを、キャンセルリストも作って対応されたというのは、ここは素晴らしいですね。

秀野:運用当初は、ワクチンの在庫が潤沢にあるわけではないので、ワクチンを1本も無駄にしないということは強く意識してきました。

LINKED:県民の接種率向上、市町村の接種の進捗格差是正という当初の目的を果たすことができましたね。

秀野:一定の役割を果たすことができたと思いますが、運用上の課題も見つかりました。県や市町村は、様々なチャネルで接種会場を作りましたが、各会場がほぼ同じスタッフが運営しています。会場を複数作るのは費用面でもマンパワー面でも非常に効率が悪くなります。悪い見方をすれば、ワクチン接種が政治家のカードになってしまったということです。この教訓を生かして、3回目・4回目接種は、なるべく会場を集約化するように、関係機関と調整を行っています。

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