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中日新聞LINKED Another Story #11「最新機器を次々と導入し、コロナ検査体制を確立」

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中日新聞LINKED Another Story #11「最新機器を次々と導入し、コロナ検査体制を確立」

  • 新型コロナウイルス

中日新聞LINKED「新型コロナウイルスとの闘い JA愛知厚生連8病院 820日の軌跡」の取材を通じて、誌面ではお伝えしきれなかった職員の想いをもう一つの物語「Another Story」としてご紹介します。

第11回は「臨床検査技師」の物語です。

知多厚生病院 診療協同部長 迫 欣二(臨床検査技師)(以下 迫)
インタビュアー:Project LINKED事務局(以下 LINKED)

取材日:2022年1月14日取材

LINKED:新型コロナウイルスが発生してから、医療資源の非常に限られた地域で、この病院にかかる期待がものすごく大きいと思いますが、臨床検査技室でどのような対応をされてきたのか、具体的に教えてください。

迫:当院には以前より感染症病床がありますので、新型コロナウイルスの感染拡大とともに検査体制の整備をリアルタイムで進めてきました。最初の頃は、検査試薬も無かったのですが、2020年3月頃から当時大変入手困難であった新型コロナ抗体定性検査をスタートしました。非常に高価な試薬だったので、すべての患者さんに実施することはできなかったのですが、感染が疑われる患者さんに実施しましたが、さほど有意な結果は得られず、今から思うと決定的な検査法とはなり得ませんでした。2020年5月には抗原定性検査を導入しましたが、感度がまだ不十分で疑陽性や疑陰性が時折みられ、現場を混乱させることがありました。2020年7月にはLAMP法という遺伝子検査を導入し、精度がかなり上がってきたので、先生方にも自信をもって検査報告を出せるようになりました。この方法でこれまでに1500件ぐらいの検査を実施しています。遺伝子検査は手間と時間がかかるので、もう少し手軽で大量にできる検査として、2020年11月に抗原定量検査を導入し、こちらはこれまでに4500件ぐらい実施しています。

LINKED:たくさんの検査を実施されていますね。

迫:2021年からは、RT-PCR法という更に精度の高い遺伝子検査機器を導入することができ、LAMP法とRT-PCR法の2つの方法を駆使して遺伝子検査を実施しています。一般的にLAMP法は多検体処理が向いているので、検体が多い時にはLAMP法を選択し、緊急で1本ずつ検査する場合にはRT-PCR法というように2つの検査法を使い分けています。この規模の病院にしては、検査実施件数は多い方だと思います。それが実現できたのも、愛知県の補助金のおかげで検査機器の導入がスムーズに進んだ事に他なりません。

LINKED:そういった中で、できるだけスピーディーに結果が求められる状況だったと思うんですけれども、検査結果が出るのにもどのくらい時間がかかるのですか?

迫:遺伝子検査では、報告まで40分から1時間近くかかりますが、2020年11月に導入した抗原定量検査では1検体の検査時間が30分にまで短縮されました。ただ、検体を前処理する時間を合わせると、40~45分はかかりますし、一度に多数の検体が提出されればその分結果報告までの時間が伸びてしまいます。最近では、また新たな検査試薬が開発され、検体投入後、18分で結果が出ます。早ければ早いに越したことないですから、そちらに徐々にシフトしていくことになると思います。

LINKED:こうした検査体制になるまでに、どういったことに一番ご苦労されましたか?

迫:当院は大きな病院ではなく、臨床検査室も15人のわずかなスタッフで幅広い検査を行っており、コロナ関連の検査だけに専属のスタッフを配置することはできない状況なので、人の配置にはいつも苦労していますね。

LINKED:今の検査体制はいかがですか?

迫:夜間の検査依頼もありますので、どのスタッフでも検査ができるようにトレーニングは実施しています。今日もたくさんの検体が届いていたのですが、皆それぞれの仕事を持つ中で、柔軟にシフト対応できる体制をとっており、全員で一致協力して検査を行っています。

LINKED:院内からの依頼で、それだけの数があるんですか?

迫:ほとんどが院内の検査ですが、地域の企業からの要請を受けたこともあります。

LINKED:少し前には、感染拡大が落ち着いて、もしかしたらこのまま収束してくれるのかと思う時期もありましたが、感染スピードの速いオミクロン株の影響というのは出ていますか?

迫:私自身も驚いています。12月中旬までは、時折オミクロン株という言葉を耳にすることがありましたが、この地域でもずっと新規のコロナ患者ゼロの日が続いており、これでこのまま終息していくのではないかと思っていた矢先、年末からすごい勢いで患者数が増え、それに伴って検査件数もかつてないほど増えています。

LINKED:それに応えるべく、皆さんがまた対応されているのですね。

迫:病院内でクラスターが発生すると大変なことになるので、それを最小限に食い止めるような体制を常にとっています。午前中は毎日職員が玄関に立ち、熱がある患者さんは、玄関すぐ脇の専用のスペースに隔離して、他の患者さんと接することなく検査が受けられるようにルール化されています。午後からの接触者外来ではドライブスルー式に検査を行っています。また、病院職員が陽性になってしまうと本人だけでなく周りのスタッフの陰性確認ができるまでは出勤することができず、診療にも大きな影響が出てしまうため、各個人が感染対策には十二分に気を付け、日々の業務を行っています。部署によっては、感染者が出たことによって業務が遂行できなくなる事態を想定して他のJA愛知厚生連病院に応援を要請して急場をしのぐという仕組みもとられています。

LINKED:実際にそのシステムが稼働したことはあるんですか?

迫:当院の栄養科で陽性者が出た際に、県下の厚生連病院から数名の栄養士さんに応援に来ていただきました。こういったことはいきなりでは上手くいかないので、机上訓練や情報交換など多くの部署が実施しています。

LINKED:医療職の皆さんが感染して、その部署の機能が停滞してしまったら、病院だけの問題ではなく、知多半島全体に大きな影響を及ぼしますから、皆さん自身の感染対策にはものすごく慎重になりますね。

迫:そうですね。できる範囲ではありますが、皆さん極力気をつけてやってくれていることと思います。それでも、感染者は出てしまいます。今、こんな状況ですからね。一番心配しているのは、この臨床検査室内で感染者が出て、一時的にせよ検査体制がストップしてしまうことです。そうした事態が起きないように、スタッフやその家族にも感染対策の徹底と体調不良時の早目の連絡を徹底しており、幸い臨床検査室からの発症者はこれまで1人も出ていません。

LINKED:皆さんの犠牲によって地域医療が守られているんですよね。これからオミクロン株がどうなるか、予測できない状況ですが、今後、強化していきたいことはありますか?

迫:今はこの体制をいかに維持していくかが課題となっています。

LINKED:それから、篠島の診療もされていると思うんですけど、島民の方の検査依頼もあったのでしょうか?

迫:島の方は非常に人情に厚い方が多くて、船で親族ごと来院されます。これまでは、親族ごと病院の待合室にいらっしゃったのですが、密を避け、感染を広げないためにということで、患者さん以外は病院を出ていただいてお待ち頂いております。最初の頃は、検査キットを診療所に持っていく案も検討されましたが、誤判定も起きやすいため、感染の疑いのある患者さんにはこちらに来ていただいて検査を受けて頂いています。

LINKED:この2年半の経験から、地域の医療を担う病院として何か気づいたことや今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

迫:当院は以前からへき地医療に力を注いできましたが、この辺り知多半島南部地区の過疎化は予想を超えて急速に進んでおります。院長がよく使われる言葉に、「厚生連の使命は地域医療を守ること」があり、それを本当に実現できる熱いスタッフが集まった病院であると誇りをもっています。コロナが収束しても、「地域医療を守る」というスタンスで、今後も何ら変わりはないと思います。

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