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中日新聞LINKED Another Story#03「面会禁止を避け、自宅で過ごしたい人々を支える」

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中日新聞LINKED Another Story#03「面会禁止を避け、自宅で過ごしたい人々を支える」

  • 新型コロナウイルス

中日新聞LINKED「新型コロナウイルスとの闘い JA愛知厚生連8病院 820日の軌跡」の取材を通じて、誌面ではお伝えしきれなかった職員の想いをもう一つの物語「Another Story」としてご紹介します。

第3回は「訪問看護師」の物語です。

江南厚生病院 江南訪問看護ステーション所長:松本暁美(以下 松本)
江南厚生病院 江南訪問看護ステーション係長:矢野由美子(以下 矢野)
インタビュアー:Project LINKED事務局(以下 LINKED)

取材日:令和3年12月23日

LINKED:国内で新型コロナウイルス感染症が広がっていく中で、訪問看護の業務に影響が出始めた当初の状況を教えていただけますか?

松本:2020年2月28日に病院が緊急事態の体制に入りました。その時から病院と同じように、発熱のある利用者にはコロナ感染を疑い、感染対策をとって対応していました。終末期の利用者に起こりやすい尿路感染や肺炎などの発熱でも、一度コロナは疑うということで、発熱者に対してはフル装備で対応させていただきました。利用者のところに行くと、まず、熱があるのかどうか確認させていただきました。熱があるようだったら連絡をくださいねとお願いはしましたが、高齢者も多いので、そこまで求めることはできませんでした。それから、もし職員が感染した場合には訪問をお休みしてもらうか、別の訪問看護ステーションで対応してもらうこともお伝えしました。

LINKED:地域の訪問看護ステーションの間で協力し合う体制はできていたのですか?

松本:地域の訪問看護ステーション長が集まって、何かあった場合の受け入れ体制を協議しました。もともと毎月定例で集まっていたので、その場を活用させてもらいました。災害なども見据えてペアリングすることも考えましたが、同時に職員が感染したら対応できないので、その時に対応できるところに依頼することや市町村単位で対応することなどを決めさせてもらいました。

LINKED:そういう体制を活用するような事例は実際にあったのでしょうか?

松本:感染した方への訪問体制も整えていましたが、実際の依頼はありませんでした。江南市内では、別の訪問看護ステーションの利用者が感染したというとことはありましたが、発症したのが1人だけだったので、何とか対応できたそうです。

LINKED:いざという時にお互いに協力し合うためのシステムなどはあったのでしょうか。

松本:江南市内の訪問看護ステーションでは、もともとLINEグループを使って情報交換をしていましたし、もう少し広域の尾北医師会圏内では、在宅医療・介護連携システム「びーよんネット」を活用することになりました。

LINKED:実際に訪問されて、利用者の方に発熱があると防護具を着用されるわけですよね。そうするとケアをする時にものすごく大変だったのではないですか?

松本:単純に動きづらいし、病院みたいに空調がきちんとしていないお家が多いので、ケアが終わって手袋を外すとボトボトと汗が流れて、水溜まりができているというような状況です。ですから、暑い時期には職員の熱中症対策にも気を配りました。

LINKED:そうですよね。ケアする皆さんが倒れたら、元も子もないですものね。初期の頃に全国的に防護具やマスクが不足しましたが、困ったことはありませんでしたか?

松本:病院併設の事業所なので、病院に用意していただきました。あとは、市と訪問看護の事業協会から希望する事業所に郵送料だけで手袋を送っていただけるということだったので、2回ほど利用させていただきました。

LINKED:逆に、病院ではどうでしたか?

矢野:かなり不足する時期がありました。特にマスクに困りました。職種によっては、1週間に1枚しか配布されず、院長自ら、角がクシャクシャになって、表面が毛羽立っているようなマスクをされながら、みんなでそういう努力をしていた時期がありました。

LINKED:訪問したご家庭に感染を持ち込まないために、ご家族のプライベートを制限することもあったと思いますが、その辺りはいかがですか?

松本:はい。大学生の娘に「感染で外に遊びに行けないから、友達の家でタコパ(たこ焼きパーティー)するね。」と言われて、「あなたが感染したら私も感染する。私が感染したら訪問看護に行けなくなる。だから、ごめんね。」と言って、娘にはすごく制限をかけました。主人は自分も仕事があるので協力してくれましたけど、大学生の娘はまだまだ気楽な感じでしたね。

LINKED:気の毒な部分もありますが、そういう協力があって皆さんを守れるということですね。

矢野:家族感染のリスクがゼロではないので、それが私たちの仕事に影響する以上、家族にも協力を求めました。15分マスクを外していると濃厚接触になるという病院のルールがあったので、家庭でも極力マスクや黙食をするようにしています。

LINKED:利用者の方から利用を控えたいというケースはありましたか?

松本:病院からの持ち込みを心配されたケースが1例だけありました。その方は状態が落ち着いていたので、1カ月に1回だけ訪問することになりました。でも、その間全く無しでは医療者側としての不安があったので、電話対応が訪問看護の代わりとなる制度を活用しました。1週間に1回は電話をして、ご本人と奥様に状況を確認しました。息子さんも積極的に関わってくださっていたので連絡を取り合い、時には「びーよんネット」も活用し、乗り切ることができました。

LINKED:ご家族のケアで対応できる場合とそうでない場合がありますよね。

松本:そうなんですよね。ありがたいことに、ほとんどの方が「来てもらわなきゃ困るから、来てくださいね」と言ってくださいました。看護学生の実習に関しても、他の訪問看護ステーションでは学生の受け入れを断られるケースが多いと聞いていますが、「学生も連れて行くけどいいですか?」と聞くと、ほとんどの方が「いいですよ」と受け入れてもらったことがとてもありがたかったですね。

LINKED:嬉しいですね。その子たちが、また将来、地域医療を支えてくれるわけですものね。利用者の方も一緒に闘い、支えてくださったように感じますね。

松本:そうです。一緒に支えてくださったと思います。

LINKED:皆さんが第1波から今日までの間、一番きつかったと感じられた時期はいつ頃でしたか?

松本:第3波の時は、近隣の施設でもクラスターが発生していて、差し迫っている感がありました。複数の介護サービスを利用している方も多いので、利用者が濃厚接触者となるケースもありました。金曜日にデイサービスを利用して濃厚接触者になった方の連絡が月曜日まで来なくて、土日に私たちが訪問してしまったこともあり、本当に困りました。利用者はデイサービスをお休みしなければならないので、お風呂に入られていた方の身体拭きをさせてもらったり、保清面での援助は訪問看護でできたかなと思っています。

LINKED:病院にいると地域の感染者数の増加を目の当たりにされるわけですが、警戒心や恐怖心を日々感じられたのではないですか?

矢野:そうですね。ピリピリとした緊張感というか、ストレスは常に感じていました。

LINKED:その中でも皆さんが、地域を支えようと思い続けて、実践されている根っこの部分は何なんでしょうか?

松本:療養されている方たちが「お家にいたい、家族と過ごしたい」という想いを支えることが、私たちの役割じゃないかなと思っています。コロナ禍で病院が面会を制限したので、お家で最期まで看たいというご家族が増えました。その人たちが安心してお家にいられることが一番大事だと思っています。利用者ご本人も症状があると不安になって病院に行ったほうがいいのかなと思うし、介護してくれる家族がすごく疲れた顔していたら、迷惑かけるから自分はここにいない方がいいのかなって思っちゃう。そういうところを、私たちがサポートすることで、「自分はここにいてもいいんだ、やっぱり家族の中で住み慣れた家で過ごせるんだ」と思ってもらえるようにしたいねと日頃から言っています。

LINKED:なるほど。

矢野:家族も大変ではあると思うんですけど、ご家族が利用者ご本人を看てあげたいという状況になることが望ましいので、家族も一緒に支えて、最期まで支援しています。

LINKED:家族の一員なんですね。

矢野:看護学生には「利用者ご本人だけではなく一つの家族として全体を見るんだよ」といつもいつも伝えていますね。家族が1つの看護単位ですね。

地域連携部・患者支援室 室長 野田 智子

病院の面会制限など環境の変化があって、これまでなら病院で終末期を迎えていた方たちを在宅にお帰しできたという事例がたくさんありました。入院して安心したものの、そばに家族がいないという孤独感と不安感の中で「やっぱり家で過ごしたい」とご本人も家族も強く思う時が増えたのだと思います。そういった希望をかなえることができたのは、病院の主治医や病棟の看護師の理解と協力、そして何よりも訪問診療の先生や訪問看護師が断らずに全部引き受けてくださったからです。訪問診療・訪問看護は地域医療において不可欠であり、その皆さんの活躍を誇りに思います。

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