歯科口腔外科                                      

 歯科口腔外科は現在、常勤歯科医3名と臨床研修医1名の総勢4名の歯科医師が診療にあたっており、歯科衛生士4名、歯科技工士2名で治療、手術に従事しています。当科は口腔および顔面、顎、頸部にかけての様々な疾患の診断、治療を専門に行い、そして高度な医療を導入することに努めており、口腔内の悪性腫瘍の治療に対して平成18年より、逆行性超選択的動注療法を行っています。これにより高度に進行した口腔癌でも切除範囲を最小限に留め治療することが可能になりました。この治療法により機能障害を少なくすることができ、手術不能な高齢者の癌治療にも対応出来るようになりました。
 また入院治療はクリニカルパス(病気の治療や検査に対して標準化された患者のスケジュールを表にまとめたもの)を用いたチーム医療を導入しており、入院 期間の短縮を行いながらも、安全性の確保と居心地のよい入院生活の両立に努めるようスタッフ全員で協力しています。  
 さらに当院は厚生労働省認定歯科医師臨床研修施設ならびに日本口腔外科学会指定研修施設に指定されています。

専門分野

  • 歯科・口腔外科

歯科口腔外科の指針

1.埋伏智歯抜歯/嚢胞摘出術などの歯科小手術 

当科では埋伏智歯抜歯や顎嚢胞摘出などの小手術を、静脈内鎮静法を用いて無痛的麻酔法による短期入院での治療を行っています。この入院治療はクリニカルパスを用いたチーム医療を導入しており、入院期間の短縮を行いながら安全性の確保と居心地よい入院生活になるよう、スタッフ全員で協力しています。

2.炎症性疾患(歯性感染症)に対する消炎処置

根尖病巣や歯周疾患の継発症として、顎骨骨膜炎や蜂窩織炎が発生することがあります。当科では点滴による抗菌薬の投与、切開排膿術、必要があればCT撮影や入院、鎮静法下での切開にも対応しております。

3.外傷(顎骨骨折、歯牙脱臼・破折、歯肉・口唇裂傷)

交通事故や転倒などによる外傷に対して、プレートによる顎骨の整復固定、歯の再植や固定、裂傷への縫合処置などの観血的または保存的治療を行っています。

4.顎関節症

口を開け閉めすると痛い、顎の関節に音がなる、大きく口が開けられないなどの症状に対して、開口訓練や薬物療法などの治療を行っています。

5.良性腫瘍

一般的に発育が緩慢で転移がなく再発が少ない良性腫瘍(いぼ、できものなど)に対して、切除や摘出などの治療を行っています。

6.悪性腫瘍に対する動注化学放射線治療

口腔癌の治療は発声、構音、咀嚼、嚥下などの口腔機能を温存しつつ治療成績の向上を図るため、最近では血管カテーテルを用いたによる動注化学放射線療法が急速に発達しています。当科では浅側頭動脈から腫瘍の栄養動脈にカテーテルを留置して、超選択的動注化学・放射線療法(連日の同時併用療法)を取り入れています。この方法は舌動脈、顔面動脈、顎動脈などの外頸動脈支配の腫瘍栄養血管である口腔癌(舌癌・歯肉癌・口底癌・頬粘膜癌・口唇癌)が適応となります。腫瘍の栄養動脈に抗癌剤を直接投与することにより腫瘍内の抗癌剤濃度が高くなり、さらに放射線治療に対して抗癌剤が増感作用を発揮するため、腫瘍の完全消失率が90%以上と高い抗腫瘍効果が得られます。この治療によって高度に進行して切除不能な口腔癌の治療にも対応できるようになりました。そして腫瘍の消失が認められた場合は原発巣の手術を回避し、顎顔面領域の機能・形態を温存する治療方針を理念としています。とくに口腔癌の60%以上を占める舌癌では外科的切除を回避することにより、発音障害や嚥下障害の後遺症がなく、社会復帰支援が円滑になります。また入院期間中は医師、看護師、歯科衛生士をはじめ緩和ケアチーム、摂食嚥下チーム、ソーシャルワーカー、退院支援など、多職種恊働によるチーム医療が充実しているため、患者の不安に応え、できるだけ安楽な入院生活が実現するように努力しています。

7.口腔粘膜疾患

長期の経過と投薬が必要となる口腔粘膜疾患も、当科が力を入れている診療内容の一つです。診療所では対応できない検査にも迅速に対応し、口腔カンジダ症、白板症、扁平苔癬などの鑑別や治療、経過観察を行います。また細胞に異型が見られるような場合には速やかに手術に移行し、病変の悪性化を防ぎます。

8.切除/欠損症例に対しての被覆材の使用

口腔癌や口腔粘膜疾患において手術の適応となった場合、切除による組織欠損が生じます。従来は一般的に植皮や非吸収性の被覆材を用いていましたが、手術が大きくなって時間もかかり、疼痛や悪臭、経過が思わしくない場合には感染することもありました。現在当科ではこれに代わって吸収性の被覆材を使用しており、早く確実に創の治癒が得られ、痛みも少なく摂食も翌日から開始するなど、良好な経過を示しています。

9.口腔ケア

口腔ケア・摂食嚥下チームの中に歯科医師、歯科衛生士がメンバーとして参加し、口腔の疾患予防、健康の保持・増進、リハビリテーションなどによって対象者のQOLの向上を目指した指導、相談、予防処置を行っています。また開院当初より当院血液内科と連携し、造血幹細胞移植患者の口腔ケアプログラムを作成して、移植前から口腔衛生マネジメントを積極的に行っており、全身疾患に対して口腔からのアプローチを早くから取り入れてきました。この動きは歯科衛生士が中心となり、専門的口腔清掃をはじめとした介入を行い、各病棟看護師の日常的口腔ケア指導や病棟往診も頻回に行われております。近年では、がん患者の周術期口腔ケアに対してもその動きは広まっており、院内の他科とも連携の動きは深まってきています。今後はがん患者の周術期口腔ケアにおいて、歯科医師会との病診連携を発展させていく方針です。

10.QOL向上のためのチーム医療/血管塞栓術

前に述べた周術期の口腔ケアだけでなく、当院には緩和ケア病棟があり、終末期の患者に対してそのQOLを向上させる取り組みもおこなっています。終末期における口腔のトラブルは患者のQOLを著しく低下させます。当科では緩和ケア科の依頼により、口腔ケアをはじめとした終末期患者の口腔トラブルに対応しています。特に口腔領域における悪性腫瘍の終末期には、腫瘍が増大することで、出血や悪臭、摂食不能などの症状が出現します。このような場合には、超選択的動注の技術を応用した血管塞栓術を行うことで、出血や悪臭が改善し、QOL向上に非常に有効です。

11.口腔外科手術における静脈内鎮静法

口腔外科手術では従来の全身麻酔での入院手術および外来手術に加えて、短期入院にて埋伏智歯・顎骨嚢胞・良性腫瘍などの口腔外科小手術に痛みを感じない静脈内鎮静法という麻酔法を取り入れています。対象として手術における痛みや不快感(手術器具による不快音や振動)も感じなくなるため、手術に対して不安感の強い方、手術のストレスを避ける必要のある心疾患(不整脈)・高血圧症などの病気のある方、恐怖心の強い子供の患者に静脈内鎮静法を行っています。これは数日間の短期入院で多数歯の抜歯などを同時に行うことで,通院回数や治療期間の短縮につながります。今後も江南厚生病院歯科口腔外科として外来・手術室・病棟スタッフによるチーム医療を心がけており、患者満足度の高い医療サービスに努めたいと思っています。

 

医師のご紹介

氏名 役職 免許取得 認定医・専門医
安井 昭夫 歯科口腔外科代表部長 昭和63年 日本口腔外科学会・指導医・認定医
日本口腔外科学会・専門医
緩和ケア研修会修了
臨床研修指導医講習会修了
鶯塚 晃士 平成24年
武井 新吾   平成25年